カリフォルニアグリズリーCalifornian grizzly

1924年絶滅
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LOST ZOOの小人と巨人 カリフォルニアグリズリーとメキシコグリズリー

ヒグマ( Ursus arctos )の祖先はアジアにその起源を遡る。そして約25万年前にヨーロッパと北アフリカに渡り、約10万年前にベーリング海峡を通ってアラスカへと渡った。しかし、その後は1万3000年前頃までそれより南へは分布を広げなかった。おそらく、南には約1万1000年前に絶滅した彼らよりも大型のショートフェイスベア( Arctodus simus )が生息していたためだろう。その後、北米のヒグマやグリズリーはアラスカからメキシコにかけてのほとんどの場所で見られるようになる。(ちなみに「グリズリー」は“金灰色の毛先”の意味。)

カリフォルニアグリズリーの剥製@ロサンゼルス自然史博物館

カリフォルニアグリズリーの剥製@ロサンゼルス自然史博物館 (画像をクリックで拡大表示)

彼らの分布範囲は広く、9亜種または個体群に分類される。遺伝子学的にはすべての種が近縁とされ、1亜種とその各個体群に分けられる。これは1870年代に絶滅してしまった北アフリカのアトラスヒグマと同様である。現在は カリフォルニアグリズリーと最も南に生息したメキシコグリズリーの2つの亜種が絶 滅種に指定されている。メキシコグリズリーはアメリカやカナダに生息するグリズリーよりも小型であるが、メキシコでは最重量かつ最大の哺乳類である。身長は183 ㎝に達し、平均体重は318 ㎏。体は淡黄褐色か灰白色で、色の濃い下毛によって灰色に見える。喉と横腹の毛が最も長く、腹部の毛はまばら。背中と横腹にある厚い下毛が腹部には少ないためである。

博物画に描かれた熊狩りの様子 メキシコグリズリーの写真

博物画に描かれた熊狩りの様子
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メキシコグリズリーの写真
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彼らはメキシコ北部の温帯草地や山岳地の松林に生息した。ほかのヒグマと同じく雑食で、主に植物、果実や虫を餌とするが、小型の哺乳類や死肉を食べることもあり、時には家畜のウシなどを襲うこともあった。そのため、グリズリーは農民たちには害獣とみなされ、1930年代にはすでに希少などうぶつでありながら、罠や毒を使って狩猟された。かつて広大であった分布地はやがて3つの点在する山だけに減り、1960年までに30頭のみが残るだけとなった。保護の姿勢を強めていったが、結局の所狩猟は止まず1964年に絶滅種に指定された。しかし1976年、1頭のグリズリーがソノラで撃たれたとの報告があった。それはソノラで数十年ぶり、4例目として確認された個体だった。

ジャマイカの熱帯雨林

州旗ほか、カリフォルニア州に おけるグリズリーモチーフたち(画像をクリックで拡大表示)

しかし、現在メキシコグリズリーは確実に絶滅 している。同じく現在は絶滅種となったカリフォルニアグリズリーは、分布範囲をバ ハ・カリフォルニア・ノルテまで南に伸ばしていた。(とはいえ、チワワ、ソノラや中 央メキシコに生息するメキシコグリズリーは、アリゾナ、ニューメキシコやテキサス のグリズリーに近い亜種であったようである。)

ショートフェイスベア、ヒグマ、 グリズリーの大きさ比較 ショートフェイスベアの骨格標本

ショートフェイスベア、ヒグマ、 グリズリーの大きさ比較
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ショートフェイスベアの骨格標本@ラ・ブレア・タールピット
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身長245 cm、体重1000 kg。北米最 大で最強のクマの1種であるカリフォルニアグリズリーは、その美しさ、大きさと強さからカリフォルニアで大変な人気を博した。それは州旗や州章を飾るほどで、カリフォルニア州の不朽のシンボルとなった。そして絶滅から30年後、カリフォルニアグリズリーは州を象徴するどうぶつとして、正式に認定された。ヨーロッパの移民がカリフォルニアにやってきたときには、1万頭のグリズリーが州のほぼ全域で生息していた。しかし、1848年に金鉱が発見され、カリフォルニアに多くの人々が移入すると、主要産業としてウシの牧畜を始めた。グリズリーは家畜を襲うこともあったため、やはりここでも農民たちの敵となる運命だった。農民たちは銃や毒でグリズリーに対抗し、家畜を守った。後にグリズリーは娯楽、また毛皮のために狩猟されるようになり、ついには縄で縛られ雄ウシとの闘いの見世物“クマいじめ”のターゲットにされた。

LOST ZOOジャマイカニシキオオツバメガの放飼場風景

LOST ZOO カリフォルニアグリズリーの放飼場風景
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20世紀のはじめにはカリフォルニアのほとんどのグリズリーが追い詰められ、殺されていた。最後の個体とされるカリフォルニアグリズリーは1922年にフレズノ郡で殺された。その2年後には、別の1頭がセコイア国立公園で何度が目撃された報告もあるが、いつの間にか姿を消した。1924年までに、文明人らがこのカリフォルニア州を 象徴する動物を絶滅させてしまったものである。しかるに、この人気者のクマが我が LOST ZOOに仲間入りしてくれることをとても嬉しく思う。是非ジャイアントバイソン のすぐ隣の放飼場に暮らしているこのどうぶつに会いに来てやってもらいたい。ただ し、深い森を模した放飼場はたくさんの植生に囲まれているがゆえに、いかに大きな クマとは言えすぐには姿を確認できないかもしれないので、どうかご注意を。

LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ

カリフォルニアグリズリー
  • ヒグマ(Ursus arctos)はベーリング海峡を通ってアラスカへ渡り、その後さらに南へと移動した。それから約1万1000年の間、北米のヒグマやグリズリーはアラスカからメキシコにかけての半開放地のほとんどの場所で見られた。「グリズリー」は金灰色の毛先を意味する。
    彼らの分布範囲は広く、9種の近縁亜種または個体群に分類される。現在はそのうち2種類の亜種が絶滅している。1924年にカリフォルニアグリズリーが、1964年には最も南に生息したメキシコグリズリーが絶滅した。
  • 身長:カリフォルニアグリズリーはグリズリー最大の亜種で、身長245 cmに達した。一方、メキシカングリズリーは身長183 ㎝の最小のグリズリーであった。
  • 体重:オスのカリフォルニアグリズリーは1000 kg、メキシカングリズリーは318 kg
  • 生息地:温暖な草地や山岳地帯の森林
  • 絶滅:グリズリーは時々、畜牛を襲うことがあり農場主らに害獣とみなされた。そのため罠にかけられたり、銃や毒を使って狩猟されたことが原因で、カリフォルニアグリズリーは1924年に、メキシカングリズリーは1964年に絶滅した。
カリフォルニアグリズリー