ダイアウルフは現存するオオカミに似ているが、足が短くより大型でどっりとしている。また同じサイズのオオカミと比べると頭が大きく、ほかのどのオオカミよりも頑丈な歯を持つ。その容姿からこの種は恐怖のオオカミ(Horrible wolf)やダイアウルフと呼ばれ、おそらくこれまで存在したイヌ科動物で最重量級の動物とされる。
ダイアウルフの骨格標本@ハーバード大學博物館 (画像をクリックで拡大表示)
元来、ダイアウルフは南米に生息したが、約10万年前に北米に移入した。そこにはそれより以前に移入していたヨーロッパオオカミがすでに生息していたが、両種は同じ生息地で共存していた。
ダイアウルフはスミロドンと並んで北米で最も有名な先史時代の肉食動物の1種である。約12万5千年から1万年前にアメリカ大陸に生息したダイアウルフは、北米の平地や草地・森林に覆われた山地や、南米の乾燥したサバンナなど、海抜0mから2255mまで広範囲にわたって生息した。現在では東部と西部亜種に分類されている。東部亜種(Canis dirus dirus)の方が、カリフォルニアやメキシコの西部亜種(Canis dirus guildayi)より足が長く歯が短い。西部亜種の体重は平均60㎏だが、東部亜種の体重は約68㎏と大型であった。頭蓋骨と歯列は現生のオオカミに似ているが、歯はさらに大きく頑丈でその咬合力はすべてのオオカミの種としては最強だったとされる。
ダイアウルフの頭骨標本と歯の機能解説 (画像をクリックで拡大表示)
その大きな体と“肉食獣らしい”歯から、ダイアウルフは大きな獲物を捕食していたことは明白である。自分よりも大きな草食動物を狩るためにこの強靭な顎の力がモノを言ったはずである。獲物を捕食するときは、パック(群れ)の中の第一位のぺアとその子どもたちが力を合わせておこなった。群れで生活をするほかの肉食哺乳類と同様、彼らが主に捕食した草食動物の重量は、そのパック全体のオオカミたちすべての体重を合わせたほどであった。
ダイアウルフの分布を示す北米の地図(グレー部分では発見済) (画像をクリックで拡大表示)
ダイアウルフの大きさから計算するに、一回の狩りで獲得した獲物のサイズは300-600kg程だったと推測される。ダイアウルフの骨のDNAを分析したところによれば、彼らはバイソンを好んで捕食していたようである。 食料が不足するとウマやマンモス、ナマケモノやラクダをも捕食したことがわかっており、時には腐肉を食べることもあったようである。
ダイアウルフと、現生のオオカミ、そして人間との大きさ比較 (画像をクリックで拡大表示)
約12700年前に大型の哺乳類たち90種以上が絶滅した。南北アメリカの大型の草食動物の絶滅によってダイアウルフも獲物の大部分を失った。大型の肉食動物や腐肉を食べる動物たちが絶滅したのは、この大型草食動物の絶滅が原因と考えられる。約16000-10000年前にダイアウルフが絶滅したのは、気候変動や人間などほかの種との競争といった別の要因も影響したと考えられる一方で、ヨーロッパオオカミは絶滅を免れている。
最後にミズーリでダイアウルフが発見されたのは9940年前のことで、その後両方の亜種が絶滅した。 そのような長い時を経て、今回我がLOST ZOOでダイアウルフのペアを迎え 入れることができたのは動物園業界として実にセンセーショナルなニュースである。外見的に大きな雌雄差は見当たらないが、オスの方がメスよりも大きいので放飼場でも見分けがつくことだろう。
LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ