オオウミガラスGreat auk

1852年絶滅
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オオウミガラス‐ 北半球のペンギン

今はなきウミスズメ科のオオウミガラス(Pinguinus impennis)。この飛べない海鳥はカナダやアメリカ北東部、グリーンランド、アイスランド、ノルウェーやイギリスなどの寒い北大西洋海岸沖の岩ばった島で群れを成して繁殖していた。オオウミガラスが集団繁殖地を形成するためには、海岸に近づけるよう傾斜した断崖のある岩場の多い島で、且つホッキョクグマから身を守るため本土から離れていることが必要であった。オオウミガラスは極度に密集して集団繁殖し、一生つがいで過ごしたとされる。卵は白地に茶色い斑点やすじがあり長径12-13cm、幅は最大で7.5-8 cm あった。卵は岩肌に一つだけ産み、両親が交代で抱卵し6週間かけて孵化させる。雛は2-3 週間で巣を離れたが、その後も両親が協力をして世話をするのである。雛が巣立つとオオウミガラスは繁殖地を離れ、秋の終わりから冬にかけて南方に移動する。そして南はフランスから北スペインまで寒い北大西洋の海で餌を求めるのである。1770年にバルト海に面したドイツの都市キールでも捕獲された記録がある。

オオウミガラスの博物画

オオウミガラスの博物画 (画像をクリックで拡大表示)

オオウミガラスは成鳥で全長約75cm、体重約5kg。北方に生息するウミスズメ科の鳥たちは南方の鳥より概して大型だったとされる。オスとメスでは羽毛のデザインはよく似ていたが特にくちばしなど、大きさの違いで見分けられる。水中で泳ぐために使う翼は15cm にも満たず、最も長い羽でも10cm 程で、先に白い縁どりがある。その形状と羽の構造はほかのウミスズメ科の鳥たちと同様で、翼が小さいのにもかかわらず重量があり過ぎて、結果オオウミガラスは“ 飛べない鳥” だった。むろん水中では機敏に泳ぎ回ったが、陸上では体を立ててよちよちと歩いて移動していたわけである。

オオウミガラスの剥製 オオウミガラスの卵殻標本

オオウミガラスの剥製
@パリ国立自然史博物館
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オオウミガラスの卵殻標本
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脚と短い爪は黒く、脚の指の間にある水かきは茶色がかった黒色。脚は極端に尾の近くにあったが、これにより水中で力強く泳ぎ、深く潜ることを可能にした。彼らは泳ぎの名人で、その特徴を狩りに活かし、ニシンやシシャモなどの亜北極の魚を好んで捕食した。巨大な黒いくちばし(長さ11cm)は重く、魚を捕るため上部から下部へかけて湾曲し上下のくちばしの表面には、8 本またはそれ以上の溝があった。背中と頭部の羽毛は黒で腹部は白、夏には目の上に大きな丸くて白い斑点ができた。冬にはその斑点が消え両目の間にある白いラインが発達した。

切手にデザインされたオオウミガラス

切手にデザインされたオオウミガラス
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かつてアメリカ大陸へ向かったヨーロッパの探検家たちは、オオウミガラスを食料や漁業の際の餌に利用し、その数を減少させた。ヨーロッパでオオウミガラスの羽毛の需要が高まったこともあり、16 世紀中頃にはヨーロッパでの個体数は大幅に減少した。そして、羽毛や肉、脂肪や油を採取するために乱獲され絶滅に追い込まれていった。皮肉にも、絶滅寸前になり希少価値がついたことが絶滅の決定的な要因となってしまった。つまり、オオウミガラスの希少性が増したため、ヨーロッパの博物館や収集家がこぞって標本にするための皮革や卵を採取したのである。

オオウミガラスの博物画(19 世紀) オオウミガラスの博物画(19 世紀)

オオウミガラスの博物画(19 世紀)
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オオウミガラスの博物画(19 世紀)
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1833 から1844 年の間に、合計27 羽が狩られ、1844 年7 月3 日、アイスランドの海岸沖のエルデイ島で最後の2羽が殺された。その後、個人レベルで不確かながらも目撃や捕獲の報告が数件あり、それでも1852 年の目撃情報が最後の記録とされている。
1883 年には全部で74 体のオオウミガラスの標本が所蔵されていた。正確にはアメリカに3 体、ヨーロッパに71 体あった。(イギリスに21 体、ドイツに20 体)現在は、78 体の剥製が約75 個の卵殻標本と24 体の完全な骨格標本とともに残っており、その多くが自然史博物館に所蔵されている。4体を除いて、残存するすべての剥製は夏毛で、2 体のみが幼鳥個体である。孵化したばかりの雛の標本は存在しない。

LOST ZOOオオウミガラスの放飼場風景

LOST ZOOオオウミガラスの放飼場風景
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19 世紀中頃以降、二度と目撃されることのなかった珍しい海鳥オオウミガラスのペアを我がLOST ZOO で展示できることをとても誇らしく思う。オオウミガラスは、間もなくオープンする新しい北極圏エリアの広い放飼場で展示予定なので、ご期待いただきたい。

LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ

オオウミガラス
  • オオウミガラスはウミスズメ科の飛べない海鳥で、カナダやアメリカ北東部、グリーンランド、アイスランド、ノルウェーやイギリスなど寒い北大西洋海岸沖の岩ばった島に生息し、極度に密集して集団繁殖した。
  • 体長:75cm
  • 体重:5kg
  • 巣と卵:巣は作らず、岩肌に直接卵を一つ産んだ。卵は白地に茶色い斑点や筋があり長径12-13cm、幅は最大で7.5-8 cmあった。
  • 生息地:繁殖期にのみ島に現れ、それ以外は寒い北大西洋の海で餌を探して過ごした。
  • 絶滅:羽毛や肉、脂肪や油を採取するために乱獲され絶滅に追い込まれていった。また、絶滅寸前になり希少価値が増したため、ヨーロッパの博物館や収集家がこの希少な種の表皮や卵を欲したことが、絶滅に追いやったもう一つの原因である。1844年7月にアイスランドの海岸沖の島で最後の生体2頭が殺された。1852年の目撃情報が最後の記録とされている。
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