二ホンカワウソJapanese river otter

2012年絶滅
  • 二ホンカワウソ
  • 二ホンカワウソ

最も著名でかつ愛され、そして絶滅したニホンカワウソ

ニホンカワウソ(Lutra lutra whiteleyi)は、かつての日本ではよく見られるどうぶつであり1880年に遡れば東京ですらその姿を見ることができた。しかし、 明治以降は乱獲が始まり1930年代には個体数が急減した。本州、九州と北海道で最後にその姿が見られたのは1955年から59年にかけて。その後は1964年に瀬戸内海で、1972年と73年に宇和海で数回目撃された例があるのみである。

ニホンカワウソの剥製@とべ動物園

ニホンカワウソの剥製@とべ動物園 (画像をクリックで拡大表示)

ニホンカワウソの骨格標本@国立科学博物館

ニホンカワウソの骨格標本@国立科学博物館 (画像をクリックで拡大表示)

最後の目撃例は1979年に四国南部の須崎市新荘川で、写真が残されている。また1979年に四国でニホンカワウソの死体が見つかり、これが本種最後の標本となった。1979年以降、多くの調査隊が彼らの存在の形跡を探すため、 かつての生息地を訪れている。しかし、それらの調査はいずれも失敗に終わっている。そして2012年8月8日、日本の環境省は正式にニホンカワウソを絶滅種に指定した。我がLOST ZOOでこの珍しいどうぶつを、最後に目撃されて以来約40年の間で初めて飼育できることをとても誇りに思う。

とべ動物園で飼育されていたニホンカワウソの写真① とべ動物園で飼育されていたニホンカワウソの写真②

とべ動物園で飼育されていたニホンカワウソの写真①
(画像をクリックで拡大表示)

とべ動物園で飼育されていたニホンカワウソの写真②
(画像をクリックで拡大表示)

ニホンカワウソは体長65から80cmで、尻尾が45から50cm。夜行性のため暗くなると 巣から出て餌を探し始める。主に魚、カニやエビを捕食するが、カタツムリ、 スイカやサツマイモなども好んで食べたことが知られている。ほとんどのニホンカワウソは自分の体重の15〜25%程のエサを摂食するが、限られた生息場所の中で他個体との競争もあり、自然界において十分な餌の分量を確保するのは6時間もかかると言われている。そのため、彼らの行動範囲は直径約16kmにもおよぶ。テリトリーを主張するのに2〜5kmごとにマーキングをしつつ、 岩の下や茂みの中に3〜4個の巣を作り数日ごと代わる代わるそれぞれの巣を利用する。

日本の切手にデザイン されたニホンカワウソ ニホンカワウソの頭骨(左♂ 右♀)

日本の切手にデザイン されたニホンカワウソ
(画像をクリックで拡大表示)

ニホンカワウソの頭骨(左♂ 右♀)
(画像をクリックで拡大表示)

ニホンカワウソは2〜3歳で性成熟し繁殖が可能となる。幼いオスが、成長するまで母親と暮らす最初の2〜3年を除き、繁殖期以外にメスとオスが 一緒に暮らすことはない。ニホンカワウソは一度に1〜6頭の子どもを産む。 生まれた赤ちゃんの目は1ヶ月間全く見えないため、その間は自分で何もすることができない。赤ちゃんの世話をするのはメスだけで、長くて1日8時間授乳し子どもを守りながら生きる術を教える。生後4ヶ月で子どもたちは狩りを始め、自分で捕食した餌を食べる。

ニホンカワウソの足拓

ニホンカワウソの足拓
(画像をクリックで拡大表示)

江戸時代に描かれた河童
(画像をクリックで拡大表示)

ニホンカワウソの博物画

ニホンカワウソの博物画(画像をクリックで拡大表示)

ニホンカワウソは昔も今もとても人気がある。それはニホンカワウソにまつわる話が多くあるためだ。ニホンカワウソは、架空の生き物「カッパ」のモデルとされている。サルやカエル、カメなどの仲間、色々などうぶつの存在がモチーフとなって「カッパ」は今なお漫画やアニメのキャラクターとして人気を博している。

LOST ZOO二ホンカワウソの放飼場風景

LOST ZOO 二ホンカワウソの放飼場風景
(画像をクリックで拡大表示)

当園では、濃いブラウンカラーで分厚いふさふさの毛皮と、水かきのある短い足を持つ生きたニホンカワウソを飼育・ 展示している。研究者らはニホンカワウソがユーラシアカワウソの亜種であるか、それとも別種であるか現在も熱く議論を続けている。ニホンカワウソはほとんどのヨーロッパ種の亜種よりも大型である一方、韓国や中国のカワウソはさらに大型で遺伝的差異もある。そのため、多くの研究者がニホンカワウソは独立種(Lutra Nippon)であると考えているようである。

LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ

ニホンカワウソ
  • ニホンカワウソはかつて日本中で見られたが、乱獲により1930年代には希少な存在となった。1950年代には本州、九州と北海道から姿を消し、四国だけに見られた。ニホンカワウソがユーラシアカワウソの亜種であるか、それとも別種であるかがこれまで議論されてきた。しかし、近年の研究によってニホンカワウソは独立した固有種と証明された。
  • 体長: 65~80 cm
  • 尻尾の長さ: 45~50 cmで体長の60~70%ある。
  • 食べ物:魚、カニ、エビのほかに、カブトムシやその他の大型の虫、スイカやサツマイモなど、体重の15~25%の量を食べる。
  • 繁殖:1年で成熟し、2、3歳で子どもを産む。生まれた赤ちゃんは始めの1か月は目が見えない。生後4ヶ月で子どもたちは固形食と狩りを始める。
  • 絶滅:乱獲が主な原因で絶滅した。1964年に数回目撃された後、1972年の目撃例が最後となった。2012年8月、日本の環境省は正式にニホンカワウソを絶滅種に指定した。
二ホンカワウソ