ピンタゾウガメPinta island tortoise

2012年6月絶滅
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"ロンサム・ジョージ" 大スターだった、ピンタ島最後のゾウガメ

1535年に5つの大きな島と10の中型の島、そして多くの小さな島から形成される群島が発見された。この群島で最も印象的などうぶつはそのうち11の島に生息する、巨大で黒っぽい色をしたリクガメだった。

このカメたちの存在が故に、この群島は"Insulae de los Galopegos(「リクガメの島々」)"すなわちガラパゴス諸島と名付けられたのである。一見、ガラパゴスゾウガメはセーシェル島のゾウガメに似ている。しかし、詳細な研究により、ガラパゴスゾウガメは南米のリクガメにより近いと証明された。最も近いものはアルゼンチンリクガメという、比較するととても小さな南米のリクガメである。その二種が分化したのは600万-1200万年前だとされている。フンボルト海流に乗って流され、南米から海を越えてきたのである。長い年月をかけて各島で特殊な亜種にさらに分化していった。現在では15種の亜種が知られているが、そのすべてが生き残っているわけではない。19世紀にアザラシやクジラを狩るためにガラパゴス諸島に上陸した人はガラパゴスゾウガメをその肉と油のために利用した。30年で200,000匹ものガラパゴスゾウガメが殺された。その結果として、250,000匹以上は生息していたとされるゾウガメの数は1970年代ごろには3,000匹にまで減少した。20世紀初頭に科学者たちはガラパゴスゾウガメが瀕しているその危機に気づいたが、ここ数十年の間にこれらの亜種を保護する重要性はさらに増した。15種の亜種の中では少なくともすでに2種(サンタフェゾウガメとフロレアナゾウガメ)は確実に絶滅していたのである。

ナンベイリクガメの一種 アカアシガメ ガラパゴス現地のレストラン看板デザイン

ナンベイリクガメの一種 アカアシガメ
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ガラパゴス現地のレストラン看板デザイン
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「ロンサム・ジョージ(ひとりぼっちのジョージ)」は長い間、ガラパゴス諸島の北側に位置するピンタ島に生息する亜種として唯一のオスの個体だった。大事をとって科学者たちはジョージをサンタ・クルス島のダーウィン研究所に移住させ保護した。これによってジョージは世界一希少な生物として国際的に多くのメディアで取り上げられた。彼は絶滅危惧に瀕するどうぶつたちの代名詞となり、ガラパゴス諸島はもちろんのこと世界じゅうでの環境保護活動のシンボルに祭り上げられた。毎年ガラパゴス諸島に訪れる165,000人の観光客たちにとって、ダーウィン研究所とロンサム・ジョージはサンタ・クルス島では見逃すことのできない、まさに「必見」のポイントだった。有名人も一般人も、このロンサム・ジョージと写真を撮るために行列を作ったものである。繁殖のことを考えると、ジョージに次ぐ2頭目のピンタゾウガメが見つからなかったことが非常に残念だった。結果、ロンサム・ジョージは80〜100歳で亡くなる最後まで独り身のままだった。3年前の2012年6月24日に、ピンタゾウガメ最後の個体としてジョージが死を迎えたわけである。世界的に有名だったジョージの死、このピンタゾウガメという種の絶滅は世界中で悲報として大きく報じられた。これは、単にジョージが有名だったからではなく、どうぶつというものはその個体数が減りすぎると、どんなに保護活動に情熱を注いでも救われる道がないと証明されたからでもある。ロンサム・ジョージの遺体は剥製となりアメリカ・ニューヨークの国立自然史博物館に運ばれ、今でも剥製としてピンタゾウガメ最後の個体を見ることができる。

チャールズダーウィン研究所のエントランス ロンサムジョージの剥製

チャールズダーウィン研究所のエントランス (画像をクリックで拡大表示)

ロンサムジョージの剥製
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エクアドルの切手にもなったロンサムジョージ

エクアドルの切手にもなったロンサムジョージ (画像をクリックで拡大表示)

現存するガラパゴスゾウガメの亜種たちを未来の世代の為に残すためには、限られた個体を大切に保護せねばならないことはもちろんだが、環境そのものをもう一度、在りし状態に戻せるように保全することも欠かせない。我がLOST ZOOではガラパゴス諸島の環境を再現している。各島それぞれに分化し、独自の進化を遂げたゾウガメたちが各亜種にあった食べ物を選ぶことができ、日向ぼっこや泥浴びもできるのである。

LOST ZOO ピンタゾウガメの放飼場風景

LOST ZOO ピンタゾウガメの放飼場風景
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LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ

ピンタゾウガメ

ガラパゴス諸島における最大のスターどうぶつとも言える大きなリクガメ。それぞれの島固有だった15種の全亜種のうち10種のみが現存している。長きにわたり、サンタクルス島のチャールズ・ダーウィン研究所で保護されていた個体は"ロンサム・ジョージ"と名付けられた。彼こそがガラパゴス諸島の中でも特に北に位置するピンタ島を代表する11種目の亜種であった。

体重:メスよりもオスは大きくなる:オスは272-317kg、メスは136-181kg

外見的特徴:長い首と鞍型の甲羅

寿命:100歳以上

卵:最大で16個の球状の卵(82-157g)を30cmの深さに産む

性比:他の爬虫類と同様に、気温が生まれてくる個体の雌雄について重要な役割を果たす:高い気温はよりメスを、低い気温ではより多くのオスを出現させる

絶滅:2012年6月

ピンタゾウガメ