レユニオンドードー(Threskiornis solitarius)は300年以上もの間、絶滅したものと信じられ、その存在すら忘れ去られてきた。しかし1974年にレユニオン島で初めてその形跡が発見されたことに端を発し、学術的に様々な議論を呼び起こし近年の生物学界を賑わせたどうぶつである。
博物画に描かれた レユニオンドードーたち① (画像をクリックで拡大表示)
本種はその名の通り、インド洋に浮かぶレユニオン島という火山島の固有種で、マダガスカルクロトキとアフリカクロトキがこれに最も近い種である。ユニオン島の「ドードー」について最後の報告があったのは1708年で、1710年 から1715年ごろに絶滅したと考えられている。
それから実に300年が経過した現在、この希少な鳥は我がLOST ZOOで飼育されてい17〜18世紀にはレユニオン島の山岳地域で、体長65cm程の白い鳥が旅行者によって記録されていた。風切羽の先と腰背部の飾り羽はダチョウのように黒色で、長い首と足、まっすぐで短い嘴。全体的にトキらしい特徴をした鳥だったが、体はほかのトキよりも肥えていてほとんど飛べなかった。おそらくこれは季節的な栄養状態によるものだろう。この白い鳥は飛ぶことが苦手だったこともあり、群れるより単独でいることを好んだため“solitaire(おひとりさま)”と呼ばれるようになった。
他でもない、すぐ近くにあるモーリシャス島に生息した、かの有名なドードーの親戚なのである。17世紀にオランダ人によって描かれた数枚の白いドードーの博物画が瞬く間に広まって、19世紀半ばからはモーリシャスのドードー(Raphus cucullatus )とロドリゲス島のロドリゲスドードー(Pezophaps solitaria)に次ぐ第3の種ホワイトドードーがレユニオン島に生息すると考えられるようになった。この見解はその後2世 紀もの期間にわたり鳥類学者らに受け入れられてきた。
しかしながらレユニオン島では、ドードーに属するような化石が発見されることはなかった。そのため、上記のオランダ人による博物画がはたして本当にレユニオン島で描 かれたものだったか、信憑性に欠けると思われるようになった。さらにレユニオン島の火山地質学についての研究成果なども、レユニオン島におけるドードーの存在をさらに眉唾なものとした。そんな中、1974年に島でトキの化石が発見され、過去のいくつかの報告はトキにまつわるものだったのではという考えが浮かび上がってきた。風切羽の骨から、この鳥は飛ぶ力が弱かったことがわかり主に地中の虫などを捕食していたが、それが季節的な栄養過多・肥満につながったと考えられた。1987年に初めて、このトキについて科学的な説明がされ、現在ではこの化石がレユニオンドードーのものであることは広く認められており、Threskiornis solitariusという学名で呼ばれるようになった。
入植者がレユニオン島にやってくると、レユニオンドードーは人間による乱獲や、持ち込まれたネコなどの家畜から逃れるため、人里離れた山頂辺りだけに生息するようになった。これらの要因によって18 世紀初めまでにレユニオンドードーは絶滅したと考えられている。
LOST ZOOキュレーター ユルゲン・ランゲ